冷却についての考察

静音冷却

水冷の行方

HYBRID3

CPUの消費電力が非常に大きくなり、水冷がPCにもやや取り入れられるようになりました。自作のみならず、メーカーPCやノートPCにまで導入されています。 セットになった水冷製品や水冷関連商品も以前に比べるとずいぶん増えてきていて、いろいろなショップで扱うようになりました。

CPUの消費電力というのは同じコアであれば、クロックがあがるにつれて増えていきます。コアが新しくなるとプロセスルールが小さくなることで消費電力が多少押さえられることがありますが、全体的に見るとやはり高性能になればなるほど(動作クロックが関係)消費電力が大きく、発熱も多くなります。

これからもどんどん新しいコアのCPUが出てくるわけですので、当然さらに高発熱のCPUが登場することになります。そうすると、水冷の需要がさらに増すことが考えられます。

ところが、CPUの消費電力が大きくなりすぎたことや、静音化の波に押されてか消費電力あたりの性能が高い、つまり省電力型のCPU開発にこれからはシフトしていく兆候が見られています。

Pentium4は消費電力の多さで有名で、Prescottの最高クロックでは100Wをゆうに越しています。これだけの消費電力から生まれる発熱を放熱しきるためには、大きなヒートシンクにうるさいファンを取り付けるか、水冷にする必要があります。

しかし、実際にそんなことをしたいと思う人はおらず、ベンチマークなどを除けば、このようなCPUを使うよりは少し性能が落ちてでも発熱の少ないものを選ぶことになるでしょう。そうなると、せっかく高性能なCPUを送り出しても利益が出ないのはCPUメーカーになります。メーカーは、ノート向けCPUにおいての課題であった「消費電力をいかに低くするか」という課題をデスクトップ向けCPUでも負うことになったのです。

すぐにそういったCPUが出るということはないでしょうが、メーカーが本気になればすぐにでも実現できるでしょう。なぜなら、CPUにはノート向けのもともと低電圧のものがあるし、Pentium4の前のPentiumIIIもどちらかというとそういった傾向にあるCPUであり、まったく新しいことをするわけではないからです。

AMDもIntelのPentium4ほど消費電力は大きくないにしても、発熱量は決して少なくないため、Intel同様消費電力を抑えたCPUを開発していくことになるのだと思われます。ちなみにIntelは今後、ノート向けCPUのPentiumMをベースとしたCPUを作っていくみたいです。

CPUの低発熱化と高性能化の具合でどちらが強くなるかはわかりませんが、現在よりも発熱が大きくなることはまずないような気がします。ということで、現時点が水冷にとっての最盛期なのかもしれません。

仮に、今後低発熱化が進んでいくのであれば水冷に限らず空冷式のCPUクーラーや静音化にも影響がでてきます。これからのCPU開発の動向が気になるところです。

水冷の利点

最近水冷が少しずつ人気が出てきました。主な理由は、特にIntelのPentium4などの最新のCPUが高発熱になってきたことと、以前からブームの静音化のせいだと思います。人気が出たことで需要が高まり、ますます低価格化・高性能化が進んでいます。

巷では、水冷は空冷よりコストがかかり、設置も面倒だが「よく冷える、静か」と言われていますが実際のところはどうなんでしょうか。

水冷が空冷と大きく違うところは、熱源の近くの冷媒が水か空気であるかです。熱源の近くとわざわざ言ったのは、水冷も最終的にはラジエーターなどから空気に放熱しているからです。

空気というのは、実は気体であるために非常に熱伝導が悪く比熱もそんなに多くありません。一方水は、熱伝導率は金属に比べると小さいですが、空気よりもずっと大きく比熱は常温常圧では最も大きいのです。そのため、冷媒としてははるかに水の方が優れているといえ、このことからも水冷がいいのではないかと思ってしまいます。

しかし、冷却の基本に戻ってみるとこれは短絡的な考えであることがわかります。実際にPCの電源を入れてから、空冷と水冷の温度の変化を見てみると明らかに水冷の方が温度上昇が緩やかになります。しかし、温度が飽和した定常状態になった場合を考えると一概に水冷が勝っているとは言えないのです。

それは、定常状態になるとき「吸熱=放熱」となることによります。前述の通り水冷も空冷同様、最終的には大気に放熱しています。空冷はもともと、空気に対して効率よく放熱するように設計されているため単にポンプと水冷ヘッドをホースでつなげただけではこれにかなわないのです。

これだけ聞くと、じゃあやっぱり空冷の方がいいのかということになってしまいますが、そうではありません。水冷と空冷の違いは、冷媒の差異だけではなくその放熱プロセスにもあります。空冷がCPU→ヒートシンク→大気という過程からなるのに対し、水冷はCPU→水冷ヘッド→水→ラジエーター→大気と水を媒介することでプロセスが多くなっています。

一見すると複雑化して効率が落ちてしまいそうですが、十分な流量と低い熱抵抗の水冷ヘッドがあればほとんど効率を悪くすることにはつながりません。水を媒介の冷媒とすると、熱源から主放熱部位を遠ざけることができ、それにより放熱のラジエーターを大型化することができます。そうすることで、結果的に空冷よりも効率のよい冷却が実現されるのです。

もちろん、水の比熱が大きいことによって熱容量が増加して急な温度上昇を避ける緩衝作用もありますし、あまりお勧めできませんがタンクをオープンにすれば水の蒸発の気化熱でさらに温度を下げられます。

熱抵抗とは

熱抵抗と言う言葉はあまりききなれないかもしれません。普段耳にすることはほとんどないでしょう。しかし、PCの冷却に関してこの言葉を知らないのはよくありません。

熱抵抗とはその通り、「熱の抵抗」です。もっというならば、熱が伝わる際の抵抗といえましょう。

熱抵抗の定義

ある物体に、熱が加わったときの流れにくさを表す係数です。単位は(K/W)や(℃/W)で表しますが、PC界では一般に後者のようです。

すべての物体には熱抵抗が存在し、ある熱量を加えればその分温度が生じます。熱抵抗はその温度差と加えるW数が比例することから値が決まります。計算式は

熱抵抗(℃/W)=温度差(℃)÷熱源の熱量(W)

となります。CPUのW数とヒートシンクの熱抵抗がわかればヒートシンクと室温の温度差が算出できるというとても便利な係数です。

熱伝導率との違い

似た言葉に熱伝導という言葉があります。熱伝導率とは、ちょうど熱抵抗と対極となしていますが違いがあります。

それは、熱伝導が固有の物質の熱の伝わりやすさを表すのに対して、熱抵抗はすべての状況を含んで表すところにあります。

すべての状況を含むというのは、たとえばCPUクーラーで言えば、ファンの回転数、形状、材質を総合的にあわせた係数を熱抵抗が表すということです。そのため、熱伝導は決まった係数のため、状況に応じた値などは存在しませんが、熱抵抗ならばすべてのヒートシンクの性能を平等に表せます。

そのため、ヒートシンクの熱抵抗を比べれば、どのヒートシンクが高性能で、どれだけの性能が今のCPUに必要なのかわかるのです。

ペルチェ素子の特性

ペルチェ素子
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初めて購入したペルチェです。

ペルチェ素子とは、1834年にフランス人のペルチェ(Jean Charles A. Peltier、1785~1845)が発見したペルチェ効果を利用した半導体で構成される素子のことです。

N型とP型の半導体に直流電流を流すと片方が冷え、片方が暖まるという「熱交換」を行ういわば「サーモポンプ」として働きます。ちょうど「ゼーベック効果」の逆の現象です。

Qmax,Amax,Vmax

ペルチェには、最大吸熱量(Qmax)、最大電流(Amax)、最大電圧(Vmax)という性能を表す値があります。

Qmaxは、ペルチェが吸熱側から放熱側へ移動できる最大の熱量(W)です。この値がペルチェのパワーを示していて、大きいものは大容量ペルチェと呼ばれています。

Amaxは、ペルチェに流せる電流の最大値です。大容量のペルチェはAmaxも大きいようです。安定した大電流を流すためには安定化電源が必要になります。

Vmaxは、ペルチェに印加できる電圧の最大値です。印加が大きければ大きいほどそれにしたがって電流も増え、吸熱量も増加します。しかし、印加を大きくすると消費電力(=電流 x 電圧)が増加するためにペルチェ自体の発熱量が増えて冷却効率が悪くなってしまいます。そのため、ペルチェはVmaxの50~60%の印加が最適であるといわれています。

防水加工

ペルチェは印加すると、しばしば吸熱面が室温以下になります。そうすると、結露が生じます。

水気は電子機器の大敵であり、それはペルチェにとっても同じことです。水滴によってショートしてしまったり、湿気で素子の寿命を縮めることにもなりかねません。

それを防ぐために、ペルチェにはシーリング加工を施します。初めからしてあるものとそうでないものがあるので買うときは注意しましょう。自分でシーリングする際は自己責任でしてください。

仮想熱源

電圧をかけるだけで、手軽に温度差を作り出してしまうこの便利なペルチェ素子をいろいろなことに生かさない手はありません。一般的にはガス式ではない冷蔵庫やその他の熱交換機器に冷媒を使用しないクリーンな冷却装置として利用されています。

ペルチェは「冷やすもの」というイメージがありますが、吸熱と消費したエネルギーが放熱側にまとめてやってくるので実際はかなりの高発熱の物体です。ペルチェの消費電力を考えれば相当なものだということがお分かりいただけるでしょう。

たとえば、Amax=6AでVmax=12Vで仮にこれが両方満たされた場合6×12=72Wの消費になります。これは、CPU並みかもしくはそれ以上の発熱になります。

この発熱を利用して、CPUの発熱を仮想的に作り出します。

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